クーパンの上場以来最大の四半期赤字をどう読むか――個人情報流出の課徴金と本業の数字を分けて考える

売上高は前年より増えたのに、四半期の赤字は2021年の上場以来最大になりました。韓国のEC大手クーパンが8月4日に発表した2026年第2四半期(4〜6月)決算には、一見すると矛盾した数字が並んでいます。理由の多くは、2025年11月に起きた顧客情報流出に関連する課徴金です。ただし、課徴金を除いても赤字は残り、事業ごとの伸び方もかなり違います。この記事では、課徴金の影響、課徴金を除いた損益、部門別の売上を分けて、数字から分かることと分からないことを整理します。
上場以来最大の四半期赤字、その中身
クーパンは韓国のEC大手で、米ニューヨーク証券取引所に上場しています。8月4日に発表した2026年第2四半期の売上高は88億5,600万ドルで、前年同期比4%増でした。
一方、営業損失は5億5,600万ドル、純損失は5億7,000万ドルでした。いずれも2021年の上場以来、四半期ベースで最大です。売上は伸びたのに損失が膨らんだ、というのがこの決算の第一印象です。
3,370万人分の流出と4億1,000万ドルの課徴金
背景にあるのは、2025年11月にクーパンの顧客3,370万人の情報が流出した事件です。この四半期の営業収支には、事件に関連する4億1,000万ドルの課徴金が重くのしかかりました。
会社側の説明によると、課徴金を除いた営業損失は1億4,600万ドル、純損失は1億6,000万ドルです。公表された営業損失5億5,600万ドル、純損失5億7,000万ドルと比べると、どちらも差はちょうど課徴金の4億1,000万ドルにあたります。上場以来最大となった今回の赤字の大部分は、課徴金の分だということです。ただ、課徴金がなくても1億ドルを超える赤字だったことも同時に読み取れます。
部門別の数字:主力ECは1%増、Developing Offeringsは2割増
売上を部門別に見ると、伸び方の差がはっきりしています。主力のProduct Commerce部門は前年同期比1%増の74億2,500万ドルでした。この部門には、即時配送や翌朝配送などの「ロケット配送」を含む主力のEC事業が入ります。
これに対してDeveloping Offerings部門は20%増の14億3,100万ドルでした。この部門には、フードデリバリーの「Coupang Eats」や台湾事業などが含まれます。全体の4%増は、伸びが1%にとどまった主力部門を、Developing Offerings部門の伸びが押し上げた形です。日本で展開するフードデリバリーサービス「Rocket Now」もこの部門に含まれますが、部門全体の数字から日本事業単独の動きは分かりません。
「顧客の支出は回復した」という会社の説明をどう受け止めるか
韓国の聯合ニュースの報道によると、キム・ボムソク議長は決算発表で、事件の影響を受けた顧客の支出はすでに大部分が回復し、事件前と同じような成長基調に戻っていると述べました。有料会員サービス「WOWメンバーシップ」の会員数も事件前の水準を上回っているとしています。WOWメンバーシップは、送料無料や無料返品、動画配信(OTT)サービスやデリバリーの割引などの特典がある会員制度です。
ただし、これは経営陣の説明であり、この発言だけで利用者の信頼が回復したとは判断できません。
信頼の代償と業績を分けて見る視点
事実として確認できるのは、流出事件に関連する課徴金4億1,000万ドルが今期の損益に影響したことと、課徴金を除いた損失についての会社の説明です。売上高は全体で4%増えていますが、そこに流出事件がどの程度影響したのかを数字から切り分けることはできません。
ここからは編集部の見方です。主力ECの伸びが1%にとどまったことを、すぐに事件の影響と結びつけるのは早計でしょう。一方で、「顧客の支出は回復した」という会社の説明をそのまま受け取ることもできません。今後の決算で主力部門の伸びや会員の動きが会社の説明どおりに推移するのかを、今回計上された課徴金とは分けて見ていくことが、プラットフォームへの信頼と業績を混同しないための現実的な読み方だと考えます。
JETRO