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1,500億ウォンのK-カルチャーファンドとMU:CON 2026——韓国コンテンツ産業が「商談」に力を入れる理由

高橋 遥 · 2026.09.23 · 更新 2026.09.23

資金の流れを表す光の帯が音符・キャラクター・映像フレームを思わせる幾何形に分岐し、商談テーブルを想起させる円環に集まる抽象イラスト。両端の二つの島形が双方向の線で結ばれている。

韓国のコンテンツ政策は、2026年の夏から初秋にかけて「資金」と「商談」という二つの動きが短い間隔で重なった。7月22日、文化体育観光部と金融委員会は、K-カルチャー産業とAIコンテンツ・技術の育成を目的に、総額1,500億ウォン(約165億円)規模の「K-カルチャー・バリューアップ・ファンド」の運用会社募集を開始する。その約1カ月半後の9月2~4日には、ソウルでグローバル音楽ビジネス見本市・商談会「MU:CON 2026」が開かれた。作品に向かうお金の入り口と、できあがったものを海外へ売る出口が、ほぼ同じ時期に並んで動いた格好だ。本稿では公表されている数値の範囲で、この二つがどう噛み合っているのかを整理する。

1,500億ウォンのファンドは何を変えようとしているのか

このファンドの原資は一本ではない。政府予算500億ウォンと、韓国産業銀行および先端戦略産業基金の出資金300億ウォンを呼び水として、700億ウォン以上の民間資金を誘致し組成する計画とされている。公的資金が全体の半分強を占め、残りは民間の投資判断に委ねられる設計だ。逆にいえば、民間分が計画どおり集まるかどうかが、この枠組みの実効性を左右する変数でもある。

規模を大きくすること自体に狙いがある。韓国の文化・コンテンツ分野ではこれまで500億ウォン前後のファンドが中心で、多額の制作費を要する作品への投資には限界があった。新しいファンドは規模を大幅に広げ、映画やドラマ、ゲームといった大型案件への投資を後押しする構えだ。小口の案件を数多く支えるのではなく、一本あたりの資金需要が跳ね上がった制作環境に合わせにいく、という方向転換として読める。

AI・IP分野とコンテンツ革新分野——配分に読める優先順位

ファンドは「AI・知的財産(IP)分野」と「コンテンツ革新分野」の2本立てで運営される。前者には1,000億ウォンが配分され、AIを活用した企画・制作企業や、ゲーム・映像・音楽などのIPを使って事業を展開する企業が投資対象となる。後者には500億ウォンを投じ、コンテンツの制作や流通を担う企業に振り向ける。配分が2対1であることは、政府が当面の重心をどこに置いているかを素直に示している。

日程はすでに終盤にさしかかっている。運用会社の提案書受付は8月12日に行われ、最終選定の結果は9月中に発表される予定だ。どの運用会社が選ばれるかで、実際の投資先の顔ぶれは相当変わりうる。制度の設計図は公表されているが、その図面を誰が動かすかはまだ見えていない段階といえる。

MU:CON 2026:音楽産業の「海外進出装置」としての商談会

資金の話と並行して進むのが、売り先をつくる仕組みづくりだ。文化体育観光部と韓国コンテンツ振興院(KOCCA)は9月2~4日、ソウル市内の上岩(サンアム)キューブセンターと龍山(ヨンサン)子供庭園で「MU:CON 2026」を開催した。今回で15回目となるこのイベントは、韓国音楽産業の企業やアーティストの海外進出を支援し、国内外の業界関係者が集まる交流の場として位置づけられている。

中核はビジネスマッチングで、韓国企業37社が参加し、ライセンス取引、流通、共同制作、ブランドマーケティングなどをテーマに国内外の関係者と協議した。並行してカンファレンスとショーケースも行われ、基調講演には芸能事務所インコード(iNKODE)の金在中(キム・ジェジュン)代表が登壇し、アーティストからプロデューサーへ領域を広げた経験をもとに韓国音楽産業のエコシステムの将来像を語っている。ショーケースにはK-POPを含む多様なジャンルのアーティスト42人・組が出演した。

議題として挙がっている項目を見ると、この商談会が想定しているのは単発の公演招聘だけではない。ライセンスと共同制作が並ぶということは、権利をどう分け合い、どこで一緒に作るかまで含めた取引が場の前提になっているということだ。ファンドが投資するIP活用型のビジネスと、商談会が扱う取引の中身は、かなりの部分で重なっている。

キャラクターIPの現場と、日韓双方向ビジネスの接点

音楽より一足早く、キャラクターIPの現場でも同じ構図が見られた。ソウルのCOEXでは7月16~19日、文化体育観光部主催、KOCCA・COEX主管の「キャラクター・ライセンシング・フェア2026」が開かれ、186社による443ブースが出展した。展示のほか、ライセンス契約や商品化、流通、共同事業を話し合う「ビジネスコネクティングゾーン」、コンテンツと関連産業の協業を紹介する「ビルドアップ企画館」、国内アニメーション作品を集めた「アニメーション特別館」などが設けられている。

日本の読者にとって具体的な接点になるのがこの会場だ。日本のIPとしてはポケットモンスターやトミカなどが展示されたが、いずれも日本の権利者自身による出展ではなく、韓国の代理店・ライセンシーによる展示だった。日本IPの展示には多くの来場者が訪れ、関心の高さがうかがえたと報告されている。また「コンテンツ東京2027」はPRブースを設け、出展者募集や来場者誘致の活動を行った。

商談の側にも日本側の姿があった。「ビジネスコネクティングゾーン」にはKOCCAの招聘で日本企業の関係者数人が参加している。参加した日本企業関係者の一人は、韓国のIPを発掘して日本に展開するビジネスと、自社のIPを韓国に展開するビジネスの双方向を検討していると述べ、日韓は地理的な利点に加えて類似性も多く、双方向ビジネスに適した環境だと語ったという。韓国のファンドと商談会は韓国産コンテンツの輸出を軸に設計されているが、その場は結果として日本側の輸出入双方の窓口にもなっている。

まだ分かっていないこと——評価を急がないための視点

現時点で確定していない要素は少なくない。K-カルチャー・バリューアップ・ファンドの運用会社は9月中に発表予定とされるが、本稿が依拠する公表情報の範囲では選定結果は確認できておらず、民間出資の確定した内訳も明らかではない。MU:CON 2026に参加した37社の商談がどれだけ契約に結びついたか、キャラクター・ライセンシング・フェア2026で最終的にどの程度の成約があったかも、公表された数字は見当たらない。規模や参加社数は分かっていても、成果はこれからの発表を待つ段階にある。

そのうえで、今後を見るときの手がかりを編集部の見立てとして挙げるなら三つある。第一に、AI・IP分野に1,000億ウォンという配分が、実際にどんな種類の企業へ流れるか。第二に、大型案件への投資という掲げられた狙いが、映画やドラマ、ゲームのどの領域で先に形になるか。第三に、日韓の双方向という言葉が、代理店経由の展示にとどまらず共同制作や共同投資まで広がるかどうかだ。数字が出そろう前に成否を断じるより、この三点の進み方を追うほうが実りがあるだろう。

JETRO

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