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韓国の最低賃金1万700ウォン時代へ──物価3.1%・政策金利3.00%が示す暮らしの変化

高橋 遥 · 2026.09.19 · 更新 2026.09.19

天秤の片方の皿に硬貨が積まれ、もう片方に買い物かごと小さな家が載り、背景に三本の緩やかな上昇曲線が重なる、文字のない概念的なイラスト

2026年8月、韓国では暮らしに直結する三つの数字がほぼ同時に出そろった。2027年に適用される最低賃金は時給1万700ウォン、8月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.1%、そして政策金利は3.00%。賃金の下限は引き上げられる一方で、それを受け止める物価と借入コストも同じ方向に動いている。この記事では公表された数値だけを手がかりに、賃上げ幅が生活のどこに吸収されやすいのかを、月収換算・品目別・金利という三つの角度から読み解く。日本から韓国の生活水準を比較して考えるうえでも、この三点セットは出発点になる。

2027年の最低賃金はいくらになったのか

韓国雇用労働部は2026年8月5日、2027年(1〜12月)に適用する最低賃金を時給1万700ウォンとすることを正式に決定した。前年からの引き上げ幅は3.7%である。決定を伝えた資料では日本円でおよそ1,177円と換算されているが、為替相場は日々動くため、この金額はあくまで発表時点の目安として受け取るのが妥当だ。

生活実感に近づけるには月額換算が分かりやすい。週40時間勤務・月209時間を基準にすると、2027年の最低賃金は月223万6,300ウォンとなり、前年より7万9,420ウォン増える計算になる。日本のように都道府県で額が分かれる仕組みとは異なり、韓国の最低賃金は全国一律で、業種による区分もない。地方の飲食店でもソウルのコンビニでも、法律上の下限は同じ数字だという点は、制度を比較するうえで押さえておきたい。

労使双方が納得しなかった3.7%という幅

3.7%という引き上げ幅は、労働側と事業者側のどちらからも歓迎されたわけではない。決定に先立ち、労働団体の民主労総と、小規模事業者を代表する小商工人連合会の双方から異議申し立てが出された。雇用労働部は最低賃金法の規定や最低賃金委員会の審議・議決の過程などを総合的に考慮したうえで、いずれも受け入れないと判断している。

同じ数字に対して正反対の方向から異議が出る構図は、最低賃金が単なる賃金の下限ではなく、生活費の補填と人件費負担という二つの圧力の交点にあることを示している。もっとも、公表されているのは異議申し立てがあった事実とその判断のみであり、各団体がどの水準を適正と考えたかまでは確認できない。ここでは温度差の存在そのものを事実として押さえるにとどめたい。

物価は再び3%台へ──何が上がり、何が下がったのか

賃上げの実感を左右するのは物価である。韓国財政経済部が9月2日に発表した2026年8月のCPIは前年同月比3.1%の上昇、食料品とエネルギー類を除いたコアCPIは3.4%の上昇だった。7月のCPIは2.8%で、4月以来3カ月ぶりに2%台に戻っていたため、8月は再び3%台へ加速した形になる。再加速の主な要因として挙げられているのは、2025年8月に実施された携帯電話料金の半額割引の反動であり、農畜水産物価格の下落や石油類の上昇鈍化があってもなお、全体を押し上げた。

品目別に見ると、上がり方はかなり偏っている。農畜水産物は前年同月比2.6%の下落。石油類は国際原油価格の上昇にもかかわらず最高価格制度の維持などで上昇が鈍化し、14.2%の上昇にとどまった。一方、加工食品は業界の価格引き上げで上昇幅が広がり1.5%。個人サービスは前月と同水準の3.5%だが、内訳では外食の上昇が拡大している。公共サービスは前述の料金割引の反動で6.5%と大きく伸びた。

つまり、生鮮食品の店頭価格は落ち着いていても、外食や通信・公共料金といった「毎月ほぼ固定で出ていく支出」の側が伸びている。最低賃金の引き上げ分が、自由に使えるお金として手元に残りにくい構造がここにある。ただし、これは公表された品目別の動きから読み取れる傾向であり、個々の世帯の家計にどう表れるかは支出構成によって大きく異なる。

2カ月連続利上げが家計にかける圧力

三つ目の数字が金利だ。韓国銀行の金融通貨委員会は2026年8月27日、政策金利を年2.75%から3.00%へ0.25ポイント引き上げた。7月に続く2カ月連続の利上げで、連続での引き上げは2022年4月から2023年1月にかけて7回続けて以来、3年7カ月ぶりとなる。

韓国銀行は、物価上昇率が高い水準で推移するなか、景気の急速な回復が物価をさらに押し上げる可能性を考慮したと説明している。この利上げにより、韓米の政策金利差は1.00ポイントから0.75ポイントに縮小した。政策金利は各種の貸出金利が組み立てられる際の起点となるため、借入のある世帯にとっては負担が増える方向に働きやすい。もっとも、実際に適用される金利や家計への波及の度合いは、契約時期や商品の種類によって異なり、公表値だけから一律に導くことはできない。

三つの数字をつなげて読むと見えること

最低賃金の引き上げ幅は3.7%、直近で確認できる物価上昇率は3.1%。数字だけを並べれば賃上げがわずかに上回るが、ここから購買力が増えたと結論づけるのは早い。最低賃金は2027年から適用される将来の値であり、3.1%は2026年8月という過去1カ月の実績値で、そもそも時点が違う。加えて、最低賃金は全労働者の賃金を代表する指標ではない。

むしろ読み取れるのは、増える月7万9,420ウォンがどこへ向かいやすいかという方向性だ。外食、通信・公共料金、そして政策金利3.00%を前提とする借入コスト。上昇が目立つのは、いずれも節約で削りにくい支出項目である。労使双方が3.7%という幅に異議を示した背景にも、同じ生活費の圧力が異なる立場から映り込んでいると見ることができる。数字の解釈はこれからの発表で変わりうるため、確定した見通しとしてではなく、次の統計を読むための補助線として受け取ってほしい。

JETRO · Korea.net

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